素粒子物理学の基礎である「標準理論」の検証に挑んでいた米フェルミ国立加速器研究所などが、実験の最終結果を発表した。物質の最小単位である素粒子の一種、ミューオンの性質を調べたもので、4年前の中間結果では、実験値が理論値から大きくずれ「標準理論にほころびか」と話題になった。しかし、今回は実験値と理論値が近い値になる結果が出た。一体何が起きたのか。
標準理論は、素粒子物理学が100年以上かけて構築してきた根幹の理論。これまでの素粒子実験の結果をほぼ矛盾なく説明できる。一方で、宇宙にたくさんあるはずなのに、見ることも触ることもできない暗黒物質(ダークマター)の候補になる素粒子がないなど、課題もある。そのため標準理論を超える「究極の理論」があるのではと研究されている。
「この測定は、今後長年にわたるベンチマークになるだろう」
日本時間4日午前0時にはじまったフェルミ研などの会見で、発表者は実験値の確かさを強調した。フェルミ研のホームページでも「驚異的な精度を達成」と成果が紹介された。
実際、実験値はこれまでの中間結果などとよく一致。精度は「10億分の127」とはるかに高くなった。これは170cmほどの人の身長を、髪の毛の太さの300分の1ほどの精密さで測ったようなものだ。
中間報告は「標準理論にほころびか?」と話題に
では、なぜ理論値とのずれが小さくなったのか。
実験で調べられたのはミュー…